被写界深度とボケ量の計算式
「どこまでピントが合うか」と「背景がどのくらいボケるか」は、焦点距離・F値・被写体までの距離で決まります。計算ツールではイメージ図でボケ具合も確認できます。
ボケを大きくする4つの方法
- F値を小さくする(絞りを開ける):F値が半分になるとボケは2倍。
- 焦点距離を長くする:同じ距離から撮るなら、焦点距離が2倍でボケは約4倍。
- 被写体に近づく:近いほどボケは大きくなります。
- 背景を被写体から離す:背景が遠いほどボケます(ただし上限があります)。
同じ大きさに写るように「焦点距離を2倍にして2倍離れる」と、ボケは約2倍(背景が十分遠い場合)になり、背景も大きく写ります。85mmや135mmがポートレートで好まれる理由です。
記号
- f:焦点距離(mm)
- N:F値
- s:ピントを合わせた距離(被写体までの距離・mm)
- c:許容錯乱円(mm)。これより小さいボケは「ピントが合っている」とみなす大きさです。
1. 過焦点距離
H = f² ÷ (N × c) + f
この距離にピントを合わせると、H の約半分から無限遠までがピントの合う範囲になります。風景写真で手前から奥まで合わせたいときの目安です。
2. ピントが合う範囲(被写界深度)
手前の端 = s × (H − f) ÷ (H + s − 2f)
奥の端 = s × (H − f) ÷ (H − s) (s ≧ H なら無限遠)
例:フルサイズ・85mm・F1.8で3m先の人物にピントを合わせると、H ≒ 134m、ピントが合うのは約2.94〜3.07m(前後合わせて約13cm)。目にピントを合わせると耳や肩はもうボケ始めます。
3. 背景のボケの大きさ
被写体にピントを合わせたとき、距離 B にある背景の1点は、センサー上で次の直径の円にボケます。
ボケの直径 b = f² × (B − s) ÷ (N × B × (s − f))
背景が無限に遠いときは b = f² ÷ (N × (s − f)) が上限です。ツールでは、b を画面の長辺に対する割合と画素数でも表示しています。割合が大きいほど背景の形がわからなくなります(目安:0.1%未満ほとんどボケない/0.5%未満少し/2%未満はっきり/それ以上大きくボケる)。
早見表:85mmで人物を撮るときのピントの合う幅(フルサイズ)
| 被写体までの距離 | F1.8 | F2.8 | F4 | F8 |
|---|---|---|---|---|
| 2m | 6cm | 9cm | 13cm | 26cm |
| 3m | 13cm | 20cm | 29cm | 59cm |
| 5m | 37cm | 57cm | 82cm | 1.68m |
許容錯乱円0.030mmで計算した前後合計の幅。
早見表:焦点距離別の背景のボケの大きさ(フルサイズ)
3m先の人物にピントを合わせ、背景が人物の10m後ろにあるときのボケの直径です。かっこ内は画面の長辺(36mm)に対する割合。
| 焦点距離 | F1.8 | F2.8 | F4 |
|---|---|---|---|
| 35mm | 0.18mm(0.5%) | 0.11mm(0.3%) | 0.08mm(0.2%) |
| 50mm | 0.36mm(1.0%) | 0.23mm(0.6%) | 0.16mm(0.5%) |
| 85mm | 1.06mm(2.9%) | 0.68mm(1.9%) | 0.48mm(1.3%) |
| 135mm | 2.72mm(7.6%) | 1.75mm(4.9%) | 1.22mm(3.4%) |
同じ3mから撮ると焦点距離が長いほど人物も大きく写ります。人物を同じ大きさに写したい場合は、ツールで距離も合わせて変えて比べてください。
早見表:広角レンズの過焦点距離(フルサイズ)
| 焦点距離 | F8 | F11 |
|---|---|---|
| 14mm | 83cm(42cm〜無限遠) | 61cm(30cm〜無限遠) |
| 24mm | 2.42m(1.21m〜無限遠) | 1.77m(88cm〜無限遠) |
| 35mm | 5.14m(2.57m〜無限遠) | 3.75m(1.87m〜無限遠) |
かっこ内は、過焦点距離にピントを合わせたときにピントが合う範囲。
センサーごとの許容錯乱円
ツールでは、フルサイズを0.030mmとして、センサーの対角線の長さに比例させています。
| センサー | 許容錯乱円 |
|---|---|
| フルサイズ | 0.030mm |
| APS-C(ソニー・ニコン・富士フイルム等) | 約0.020mm |
| APS-C(キヤノン) | 約0.019mm |
| マイクロフォーサーズ | 約0.015mm |
| 1インチ | 約0.011mm |
高画素のカメラで等倍に拡大して見る場合は、もっと小さい値(フルサイズで0.015〜0.020mmなど)にすると実感に近くなります。ツールの「詳しい設定」で変更できます。
スマホやセンサーの小さいカメラの場合
ボケの大きさを決めるのは実際の焦点距離とF値です。センサーが小さいカメラで同じ画角・同じボケを得るには、F値に換算係数を掛けた値がフルサイズでの相当値になります。たとえばAPS-Cの56mm F1.2は、フルサイズの約86mm F1.8に相当します。スマホはF1.8と表示されていても、フルサイズ換算ではF5〜F12程度です。ツールで「35mm判換算値で入力」を選ぶときは、F値も換算した値を入れてください。
計算と実際がずれる主な理由
- 許容錯乱円は「どこまでをシャープとみなすか」の約束ごとで、見る大きさや画素数によって感じ方が変わります。
- 実際のボケはレンズの設計(玉ボケの形、口径食、収差)によって見え方が違います。
- 近距離ではピント位置で実際の焦点距離や実効F値が変わるレンズがあります。